去る6月18日、1984年に AcornsoftからBBC MicroとAcorn Electron用に発売されたEliteから、2014年にリリースされたElite: Dangerousまで20年に渡って続いたEliteシリーズに対して「The longest-running space simulation series」のギネスレコードが認定されました。おめでとうございます。
Elite: Dangerousで初めてEliteシリーズのことを知ったという方は多いと思いますが、実は私もその一人で、長年ゲームを楽しんでいたにも関わらず後年多くのゲームソフトに影響を与えたこのシリーズを知らずに過ごしてきたことに少し後悔しています。
Wikipedia英語版のEliteについての記事を読むと、Wing Commander: Privateer、EVE Online、Freelancer、Xシリーズ、No Man’s Skyといった宇宙を舞台にした蒼々たるタイトルがEliteに影響を受けているとの記載がありますが、同時にGrand Theft Auto(以降、GTA)もその一つであると述べられています。GTAとEliteの関係って何でしょうか?
こちら に先程のWikipediaの記事が参照しているGary Penn氏へのインタビュー記事があります。Gary Penn氏はEliteシリーズの2作目にあたる「Frontier: Elite II」の開発に携わった人物で、同時にGTAの初期3作の開発にも携わっています。3ページにわたるインタビューの中で彼はEliteとGTAの関係についてこう述べています。
インタビュアー: その後、あなたは最終的にDMA DesignにてGrand Theft Autoの前身にあたるRace’n’Chaseの開発に携わるわけですが、私の記憶が正しければ初めは警官をプレイできたんですよね?
Gary Penn氏: 僕の記憶によると、どちらでもプレイできたんだ。もともと警官と強盗の両方をね。できることはあんまりなくて….当時としても変わった作りだったんだけど、まったくもって伝統的なのミッションベースのものだった。ミッションを選択してかなりリニアに進行するんだ。
でも僕はFrontierで働いていて、そこはDMA Designとはとても異なる環境をもっていたし、同時にSyndicateやMercenary、Eliteといったような旧来とは異なるものを作ろうという熱意をもって作品に取り組んでいた人たちが同じチームにいたんだ。その組み合わせは、間違いなく現在あるようなよりオープンプランな構造につながってるよ。
ゲームは仕事の引き受け方が同じじゃないという点を除けば、基本的にはEliteの舞台が都市になっただけなんだ。ちょっと異なる方法で仕事を受けるだけで、構造的に非常に似ている。より現実世界に近くプレイヤーにとって受け入れやすい設定になっているだけだ。ゲームは最初警官と強盗がいるだけだったんだけど、その後急速に進化していった — 誰も警官になりたがらなかったんだ。ワルになることのほうが断然楽しいからね。
そしてその後Grand Theft Autoに進化するんだけど、その数年間は本当に大変だった。まったく進展がなかったし、何も上手くいかなかった。上手くいってるなんて感じたこともなかったよ。ほとんど身動きが取れない状態だった。パブリッシャーのBMG Interactiveも上手くいってない状況を見てお払い箱にしたがったってたしね。
言われてみれば、ある一定の作られた空間でプレイヤーは何をしてもいいし、特定の場所にいけば仕事が受けられる、仕事で得られたお金によってできることの選択肢が増える、といった基本構造は、現在のGTA VやElite: Dangerousでもまったく同じです。ただ舞台となる空間がリバティシティのような現実にある都市を模した仮想都市空間か、観測によって得られたデータを元に生成された仮想宇宙空間かという違いがあるだけです。もちろんGTAもEliteもそれぞれ独自の進化を遂げており、最新のGTA VとElite: Dangerousがまったく同じゲーム性をもった作品であるわけではありませんが、根底に非常に近い関係をもっていることが伺えます。また技術の進化に伴って両方とも多人数によるマルチプレイの要素を導入してきたところも興味深いですね。
商業的にはGTAシリーズの方が圧倒的に成功しているわけですが、Xbox One版のプレビューを開始して家庭用ゲーム機の展開も始めたEliteシリーズの今後も期待したいところです。